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フレイルティー/妄執 ★★★★☆

ビル・パクストン監督、2001年、米
ビル・パクストン、マシュー・マコノヒー、ジェレミー・サンプター他

●あらすじ●
神の手殺人事件。"神の手"と書いたメモを残す連続殺人事件が世間を騒がせていた。ある雨の夜、事件担当捜査官ドイルの元に、フェントンと名乗る怪しげな男が現れる。彼は神の手殺人の犯人は俺の弟のアダムで、自殺したと語った。ドイルは信じていなかったが、アダムが埋葬されている場所に連れて行くと言い、詳細を語りだした…。

●感想●
落ち着いた展開・語り口・回想など静かに展開する恐怖はいい感じで、大いに期待した。兄弟のたった一人の保護者である父が、ある日突然神の啓示を受けたと言い出し妄信的になってしまい、子供の前で殺しを始める。兄は当然それを人殺しだと思ってるけど、弟は影響受けまくりで素直に信じていて…。

おかしな家庭環境と信仰に追い詰められ葛藤する子供の立場、子供に何か出来る事があるのか、そして子らがどういう影響を受けていくのか、そのテーマが凄く良かっただけに、このオチだけは絶対勘弁してほしいと感じる方向にしか行きようがない展開は見ていて切なかった。ただ、なかなか、うん楽しめた。結末は好きじゃないけど、心にグロテスクで引き込まれる。こういうの好きな人ならオススメ。

直接的な残虐表現は殆どないのだが、ホラー映画よりも残酷に感じた。日本ではPG12だったけれど、18禁の国も沢山ある。

<!以下完全ネタバレ注意!> 

映像(の中の家族の行動や様子)を素直に解釈してテーマ性を考慮すれば、登場人物が少ない事もあって、最後はどうなるかほぼ読めるストーリーだと思う。そこらを気にしないようにして常識的な結論を望むと多分違う方に導かれるとは思うけど、それでもさらに裏切ってほしかったなー。

というわけで、父は本当に啓示受けてたし、ラストの粛清対象はFBI捜査官でしたっと。うーむ、実はアダムだったという点と、話している内容はどっちとも転べたと思うけど…。子に強要する殺人が正当化されるみたいでちょっと嫌だな。でもギリギリまで期待したし、シナリオはよかったと思う。

っていうか、地元保安官殺すかなー。そこは使命から完全逸脱していて、他の殺人者たちとなんら変わらないところまで堕ちてるよね。神が味方だとかいって監視カメラ映像も腐らすほどの威力を持ってるなら、尚更殺す意味が不明。これじゃフェントンが父を殺したのも、正当化されかねない。でも正当化されようがなんだろうが、父は道を誤ったために悪魔に敗北したとか、罰を受けたとでもすれば全然OKで、父が死んでも弟が引き継ぐし、神的には何の問題もない。うーむむ!

<謎や疑問を1人で考える会>

よく見てない所があるため正確じゃないかも。もう一回放送したらちゃんと見ようと思ってたけど、痺れを切らした。

謎1。一番最初にあったバラバラなどの事件は誰がやった?
んー、やはりフェントン。"神の手"とかオヤジワードを使ったメモを残し、アダムをおびき寄せたかった。動機はよく分らない、殺したかったのか殺されたかったのか…。アダムの悪魔殺しは、父から教わった特定の手順でバラ園に葬られるためバラバラで適当に捨てるのは考え辛く、自作自演ではないと思われる。加えて、フェントンちの地下には他の被害者の死体があった。で、オヤジが言ってた通りフェントンは悪魔だったという事に繋がるのだと思うが、目の前でオヤジが人(悪魔だが)殺しをして強要してくるという異常環境にいたせいだろう、どう考えても…。

謎2。最初、ドイルが電話で確認した"弟の死体を乗せた救急車を奪った"事件とは?
字幕では"弟"だったと思うが、英語で弟と言ってた?全く聞いてなかった。FBIに救急車が止まっていたのは本当で、アダムが乗ってきたのだろう。FBI捜査官ドイルはミート保安官事務所に電話掛けて確認している。これにはアダムの妻ベイリーが応対したと思われるので、何とでも嘘はつける。こんな事をしたのは突然の告発を信じてもらう為だろう。

謎3。最初、兄の部屋と思しき所で頭パーンしたの何だったかな?
アダムの作り話が回想シーンになっただけで、実際は名簿を手に入れたアダムがフェントンを殺している。後に、父がどこからか持ってきたパイプのようなもので殴っているシーンが出てくるが、こっちが本当っぽい。

謎4。名簿を手に入れたってなに?
見てなかった。新たに啓示を受けたんだろうか?それとも7名リストの事?そこにフェントンは入ってたの?肝心な所なのに最後の名簿の名前リスト全然見てなかった、悔しい。凄く気になるので見てた人居たら教えてください!ストーリー上名前が確認できるのは、1.Cynthia Harbridge、2.Edward March、4.Brad White、7.Wesley Doyleかな?そしてFenton Meiks。

謎5。父はやっぱり神の啓示を受けてたの?フェントンは悪魔?
映画中の描写を見ると最初からそう言いたかったとしか思えない。ラストもぼかす気が一切ないストレートな結論だった。
1.父には、拉致してきた者をいちいち触って被害者とオヤジ共々ビク!となるシーンが必ずある。触れると悪魔なら過去が見え、作業に支障をきたして困っちゃうので神は神器の一つとして手袋も与えてくださった。人間を殺した時はそうはならずに吐き気を催していた。
2.アダムは子供時代焦点が当たってないのでただ父に従っているだけに見えるが、アダムもその能力があったので仲の良い兄より父を信じれたし、通報しようとした兄が閉じ込められても大して助けようとしなかった。アダムはこの能力のため、FBI事務所にて握手を求められた時さりげなく拒否している。その上全てのカメラに顔が映らず、ハル捜査官は再び会っても全く覚えていなかった。神以外で説明つけられないという演出だろう。
3.そして、子供時代のフェントンは穴を掘らされても2週間閉じ込められても祈りを頑なに拒否したが、子供ながらに常軌を逸したこの強情さは悪魔気質からという事になるのだろう。

謎6。悪魔って…、結局殺人者?殺人者ならもっと酷い奴がいるはず。
フェントンの出生を考えれば、悪魔とは地獄からポッと這い出てきて悪さをしている存在ではなく、人間の母から生まれた子である事が解る。これでは悪魔という存在が先天性なのか後天性なのかすら分らないため、やっぱり「人間の悪人」なだけじゃないかと言いたくなる。

大量虐殺が発生するような、例えば戦争やテロ行為を行ったり支持したり世論を導くのは、人の愚かさゆえ? これより1人2人の隣人を殺す方がより悪魔的? どうせなら1人くらい政治家でも混ぜこんでおけば良かったのに。 …ま、そんな政治的な事はこの映画で表現したい事ではないと思うけけど、映画の悪魔っていつも小悪党的存在でモヤモヤする。悪魔は人の心にしか存在しえず結局は想像の産物なので、人間が思いつく以上の知性や残虐性やバリエーションが存在しえないのはある意味当然で、それを見た人が「人間の方が怖いね」なんて感想になるのもまた当たり前である。

話がそれたが、とにかくこの事実は私の感覚で考えれば"人殺し"に他ならない。しかし悪魔しか殺していないというのなら、やはり殺された奴らは単なる殺人者だからではなく"悪魔"なのだろう。たとえ大量殺人犯でもなんでも、悪魔じゃないならGODの処分対象にはならないという事だ。基準は分らないが、神のお考えなので人知が及ばないのは仕方ない。選ばれた7名は残忍性において人間には少々劣るかもしれないが、なんと言っても悪魔だったのだから…。

結論。ハッピーエンドなのか殺人なのか、どう捉えていいかわからないモヤモヤが残り、スッキリしない恐ろしさに引きずられるストーリーとして上手く出来ている。



by a-n-a-n | 2010-08-25 21:07 |   映画感想順
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